【量子論と“粋”の構造】

江戸の町人の美意識、“粋”。

九鬼周造「いきの構造」によれば、粋は3つの要素を内包する。

すなわち、媚態、意気地、諦観。

 

媚態とは、恋愛において

相手との間に先のわからない不安定な関係を持ち込むこと。

つかず離れず、色気を帯びた駆け引きは

先の読めない不安定さによって引き起こされる。

 

意気地とは、理想主義から生まれた気品。

己の信念を貫く強さ。

 

諦観とは、執着を断つこと。

「思うこと 叶わねばこそ 浮世とは」

思い通りにならない現実をそのまま受け入れ

晴れ晴れとした境地に達すること。

 

 

量子力学。

1927年、ハイゼンベルグが不確定性原理を示し、

科学的決定論がひっくり返った。

 

粒子の位置と運動量は同時に決めることができず

粒子のふるまいは確率分布でしか記述できない。

宇宙は不確定で予測不可能なものだった。

 

 

ニュートンの天文学をはじめとして

科学者たちは、

自然界に厳密な科学法則が存在するという信念のもとに

さまざまな現象から理論を導き構築してきた。

 

ある時刻における宇宙の状態がわかれば、

そのほかのすべての時刻における宇宙の状態は計算できるはずだと。

 

 

一方で、ミクロな世界の数々の実験結果をふまえ、

科学者たちは、不確定性原理を受け入れた。

 

いまだにこの理論をよく理解しているとも、納得しているとも言えないが

理論がなんでも計算できるという期待を放棄して、

「わからないものである」ことを受け入れたうえでなお、

理論を構築し計算しようとしている。

 

 

不確定な世界(媚態)に対する

信念(意気地)と受容(諦観)

 

量子論と“粋”の構造。

宇宙と宇宙に魅せられた科学者が教えてくれること。

江戸の町人が残してくれたこと。

 

信念を貫くこと。

あるがままの現実を受け入れること。

このバランスが、新たな世界を切り拓く。

このバランスの上に、己の人生を拓いていこう。