【時間_3.ボルツマン】

過去と、未来。

この区別はどこから来るんだろう。

 

この世界を記述する基本法則、

古典力学とか電磁気とか重力とか量子力学とか

これらの法則の中では、

過去と未来の区別はないのだという。

 

たとえば

 

ボールが重力によって落ちる。

ボールが跳ね返って上昇する。 

位置エネルギーと運動エネルギーの交換は可逆。

 

 

唯一の例外は、熱。

熱が関係するときだけ、過去と未来が区別される。

 

熱いものは冷めていくけれど

冷たいものがひとりでに熱くなることはなく

 

落ちたボールが跳ね返ってこなくなるのは

地面にあたるとき、

エネルギーが摩擦熱として出ていくから。

 

熱が登場した瞬間、出来事は不可逆となる。

 

 

熱だけ、どうして一方通行なんだろう。

 

 

ボルツマンは、

熱は、分子のミクロレベルの振動で

その分子の状態の“無秩序さ”が

エントロピーであることを示した。

 

エントロピーは必ず増大する。

つまり、秩序は必ず失われていく。

 

自然の秩序の喪失は不可逆過程であり

私たちが過去と未来を区別する唯一の基準となる。

 

 

そして私たちが

秩序が失われていると認識するのは、

 

私たちの視野が曖昧だから、

ぼやけた視界では違いがわからないから、

本当は全部“特別な状態”なのに

その状態とこの状態は「同じ」と認識してしまうから

・・・??

 

 

ボルツマンは、

私たちがこの曖昧な視界によって

世界を曖昧にしか記述できないから

エントロピーが存在する、と理解していたという。

 

もし、全知全能のクリアな視界で

ミクロレベルの全ての状態を正確に認識できたなら

 

 

過去と未来の区別、時間の矢は

 

存在しないのかもしれない。